玉藻の前(たまものまえ)





室町時代に書かれたとされるおとぎ話に出てくる、平安時代後期に鳥羽上皇に仕えたとされる女官。絶大の美女でありながら博識にて多才、常に良い香りを漂わせ、夜には玉のような光を放つため『玉藻の前』と呼ばれるようになります。その正体は白面金毛九尾の狐と呼ばれる悪狐で、鳥羽上皇を呪い殺そうとしたものの安倍晴明の子孫である陰陽師、阿倍泰成に正体を見破られて軍に追われ、最後は那須野の原にてその命を終えたとされています。

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インドの華陽、中国の妲己、そして日本の玉藻の前。世界を股にかける白面金毛九尾の狐の華々しい経歴ですね。もっとも、この三つ(あるいは中国の褒姒も含め)の話を関連づけて壮大な物語にしているのは日本だけだそうで、そのおかげでおめでた妖怪であったはずの九尾狐はほぼ白面金毛九尾の狐の代名詞とされ、悪妖怪のスターとして一躍名を馳せることになったようです。ちなみに彼女が最後に変化したとされる殺生石は実在し、栃木県那須町にて実物を見ることができます。また、殺生石は最後、砕けて破片が全国に散らばったとされ、いくつかの場所で殺生石由来とされる石も見られるようですね。

白面金毛九尾の狐、彼女についてのさらに詳しい話は次回の解説にて。



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